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1104泣いた牛

泣いた牛

高橋文子:文  津田真帆:絵
A5判 127ページ 上製 定価:本体1,400円+税
ISBN978-4-86261-082-9
発行:2010年12月
対象:小学低学年~

★ご注文について

泣いた牛

内容

今では無人島の八丈小島で生まれ育った著者の子ども時代の物語。
昭和30年代の離島での暮らしを、3姉妹を通して描く。

豊かな自然に囲まれてすくすく育つ3人の子どもたち、全島民あげての岩のり採り、台風におびえたこと、家で飼っていた牛との別れなど、くらしをいろどるこまごまを離島での人情の中に描く。
島の人々は、電気もない、お店もない、交通手段は、牛にたよる生活環境のなかで、こころを寄せ合って明るく、温かく、強く、生きていた……。

目次

岩のり採り

台風が来た

台風のおくりもの

ツバキの花咲くころ

泣いた牛

著者による前書きより

 東京から南へ二百九十キロメートル離れた伊豆七島の南端、八丈島の北西七・五キロメートルの海上に、面積三・一平方キロメートルの小さな島があります。八丈島の二十分の一にもみたない小島ですが、最盛期には五百人ほどの人びとが住んでいました。
 島の肌は、太平洋の黒潮の荒波に、日夜洗われています。その孤島こそが、私が生まれ育った八丈小島なのです。

 生活条件の厳しさもあり、過疎化の流れは止まらず、老人と子どもだけの島になりつつありました。そこで、ついに昭和四十四年、全島民九十一人が島を離れました。その後、無人島として新たな歴史を刻んでいます。

(中略)
 ここに収めた作品は、私が小学生の、昭和三十年代初め、八丈小島がまだ光り輝いていたころの出来事を題材として、物語風にまとめあげたものです。

 当時、病院の無い八丈小島では、学校の先生方がお医者さんの代りになっていました。

 商店は一軒も無かったので、日常必要な品物は、月に数回の定期船で、八丈島の商店から仕入れ、運んでもらっていました。

 水道もありませんので、雨水を貯水タンクにためて使っていました。車も、ありません。

 第一、走る道路がないのです。荷物の運搬は人びとが背負い、バッテリー電池など重いものは牛で運んでいました。電気もありませんので、ランプ生活でした。

 初めて小島を訪れた人は、驚くことばかりだったでしょう。テレビ、洗濯機、冷蔵庫がもてはやされていた時代のことですから・・。

 でも、生まれ育った私たちにとっては、それが当然のこととして、慣れ親しんできたので、「大変だ」とか「苦労」とかいう言葉は、あまり目にしませんでした。

 一つの小さな村が、一つの大きな家族として、助けあって生きることを、子どものころから自然と身につけていたからなのです。
 私にとっての、そんな貴重な体験が、現代の多くの小・中学生の皆さんの目には、どのように映ることでしょうか。                                        

著者プロフィール

■文:高橋文子(タカハシ フミコ)

1947年八丈小島に生まれる。
東京都立八丈高等学校卒業。
1969年八丈小島全員離島。
両親とともに11年間八丈島にて民宿経営。
リボンフラワー教室を開設、また郷土民芸品の創作活動。結婚を機に千葉に定住。
著書に「思い出の八丈小島」(文芸の森社刊)、「詩集 八丈太鼓」(銀の鈴社刊)がある。
「とっくんこ」「やまもも」「一軒家」同人

■絵: 津田真帆(ツダ マホ)

東京都生まれ。作品に『うずまき・うずまき・かたつむり』『巨男の話』『わたしのあかちゃん』『あきですよ』『あかちゃんがいるの!』『日照時間』などがある。

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