4119細谷建治児童文学論集 Ⅰ
てらいんくの評論
細谷建治児童文学論集 Ⅰ
児童文学批評というたおやかな流れの中で
細谷建治:著
A5判 512ページ 上製
定価:5,000円+税
ISBN978-4-86261-146-8
発行:2019年06月
内容
児童文学批評を通じて「子ども」と「文学」の関係を問い続けてきた著者の、50年に渡り発表してきた論文をまとめた待望の論集全3巻。第1巻では二つの長編評論と個人誌『童話ノート』掲載の八本の小論を集成。
【第1巻】
1980年代から現在までの日本の児童文学を編年体で記し、また気になるテーマ別の形でまとめた「児童文学批評というたおやかな流れの中で」。そして、明治から現代までの日本の児童文学をを批評史の観点からまとめた「日本児童文学批評史のためのスケッチ」。
二つの長編評論と個人誌『童話ノート』掲載の八本の小論を集成。
目次
【Ⅰ】
児童文学批評というたおやかな流れの中で
① 八〇年代児童文学は一つの事柄を二つの作品で語ることから始まった。
② 九〇年代児童文学は夏の庭で千人の小人たちと足ぶみをしていた。
③ 〇年代児童文学は守り人と共に重層化した世界を歩み始め「かはたれ」と出会った。
④ いま児童文学は「いじめ」「スクールカースト」の呪縛に頓着せずパジャマガールのようにハンザキした方がいい。
⑤ いま児童文学は3・11後の絶望を「かさねちゃん」と重ね合わせ決して「希望」や「絆」への道に行かない方がいい。
⑥ いま児童文学は「げんき」になるよりももっと弱虫で臆病で卑怯者でときに嘘つきになった方がいい。
日本児童文学批評史のためのスケッチ
1 児童文学批評の三つの源流
2 現代児童文学批評の展開
【Ⅱ】
いい子という呪文、わるい子というレッテル─『きみはいい子』雑感。あるいは、ぼく自身のための記憶のモザイク
子どもへのまなざし。あるいは、子どもの「自立」と「保護」との奇妙な緊張関係について─埒外に置かれた子どもたちを、ぼくらはどう描き、どう読み解けばいいのか
貧困の栄光。あるいは、エンターテインメントとしての「自活」について
【Ⅲ】
手をつなぐ
見つめあう
疑問符の向こうがわへ
《いつのまにか疑問符》の子どもたち─「疑問符の向こうがわへ」補遺・あるいは『銀色の日々』の少年たちについて
とびたちかねつ
著者による覚書
解説/批評の時空のひらきかた 佐藤宗子
解説より抜粋
細谷建治はかつて、「児童文学作品がなくても、児童文学批評は成り立つ」と言っていた。既存の作品に寄りかかるのではなく、「子ども」と「文学」の関係そのものを問い続けることをめざす―そこに「児童文学批評」が在る、ということかと考える。そうしたことを言いながら、実に多くの作品を踏まえて書き上げられた彼の批評の文章群が、この三冊の論集に編まれることで「児童文学批評史」を構築していく。三冊全体を俯瞰した際に、それがどのような流れとして読者に見えていくだろうか。(佐藤宗子・児童文学評論家)
著者プロフィール
細谷 建治(ほそや けんじ)
1946年群馬県生まれ。群馬大学教育学部卒業後、東京都江戸川区の小学校に、40年ほど勤め退職、現在に至る。
日本児童文学者協会会員。日本児童文学学会会員、児童文学評論研究会会員。個人誌『童話ノート』を刊行。
「どろぼうたぬき」で第一回船橋市文学賞、児童文学部門文学賞受賞。
編著に『資料戦後児童文学論集全三巻』(偕成社)。
共著に『国語教科書攻撃と児童文学』(青木書店)、現代児童文学の可能性』(研究=日本の児童文学4、東京書籍)、『児童文学批評・事始め』(てらいんく)。